制度は、変わります。しかも、さかのぼることがあります。
マレーシアのラブアン法人の実体要件、日本の外国子会社合算税制や国外転出時課税など、この10年の制度変更を一次資料にもとづき時系列で整理しました。2021年の規則が2019年にさかのぼって適用された経緯も解説します。
マレーシアの法人制度も、日本の課税制度も、この10年で何度も変わりました。「一度つくれば終わり」という前提で検討すると、あとから条件が合わなくなります。
とくに 2021 年にマレーシアで公布された規則は、2019 年 1 月 1 日にさかのぼって効力を持つものでした。すでに終わった事業年度の判定基準が、あとから置き換わったということです。ラブアン法人について「制度が急に変わった」と語られることがあるのは、この出来事が背景にあります。
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P.U.(A) 423/2021 規則1(2)「規則3を除き、2019年1月1日に効力を生じたものとみなす」。すでに終わった事業年度の判定基準が、あとから置き換わりました。
このページは制度の変更履歴を時系列で整理したものです。個別の事案にどう当てはまるかは事情により異なります。具体的な判断は税理士・所轄税務署にご確認ください。当社は税務代理・税務相談を行う事業者ではありません。記載は 2026-09-20 時点で一次資料により確認した内容です。
この10年で変わったこと
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2015.07.01日本
国外転出時課税
(出国税)の創設 一定額以上の対象資産を持つ方が日本を出るとき、実際に売っていなくても含み益に課税される制度が始まりました。平成27年7月1日以後の国外転出に適用されます。
移住を検討する場合、出国そのものが課税のきっかけになります。
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2018.09日本
CRSによる口座情報の
自動的情報交換が開始 共通報告基準(CRS)にもとづき、海外の金融口座の情報が各国の税務当局のあいだで毎年交換されるようになりました。日本は平成30年から実施しています。
海外に口座を持つこと自体は問題ありませんが、「知られない」という前提は成り立ちません。
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2019.01.01マレーシア
ラブアン法人に
「実体要件」が導入 優遇税率の適用を受けるには、ラブアンにおける常勤従業員数と年間運営支出の要件を満たすことが条件になりました(P.U.(A) 392/2018)。満たさない場合は 24% が適用されます。
「登記だけして実体を置かない」という使い方ができなくなった転換点です。
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2021.11.22マレーシア
現行規則が
公布され、 2019年1月1日にさかの ぼって適用 P.U.(A) 423/2021 が官報に公布されました。規則1(2) は「規則3を除き、2019年1月1日に効力を生じたものとみなす」と定め、規則5で 2018年の規則を廃止しています。
なお規則3(ラブアンでの取締役会を年1回以上開催する等の管理支配の要件)は「第二附則の項目2の目的のため」のもの、つまり持株専業の法人に向けた規定で、こちらは 2021年1月1日からの適用です。
確定した年度の要件が後から置き換わりうる、という前例です。制度の追随を誰が担うのかを決めておく必要があります。
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2022.01.01マレーシア
国外の所得を
マレーシアで 受け取ると、 課税の対象に 居住者がマレーシアで受け取る海外源泉の所得は、2022 年 1 月 1 日から原則として課税の対象になりました (Finance Act 2021)。個人 (パートナーシップの事業を除く) は免除の命令 (P.U.(A) 234/2022) の対象です。期限と条件は LHDN のガイドラインで確かめてください。
移住のあとに日本から受け取るお金がある場合は、所得の種類ごとに扱いを確かめる必要があります。
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2024 (課税年度)マレーシア
中小企業の軽減税率に «外資 20% 以下» の条件
課税年度 2024 から、外国法人・外国籍の個人が払込済みの普通株の 20% 超を直接・間接に持つ会社は、中小企業の軽減税率 (15%・17%) の対象外になりました (LHDN 公開裁定 No. 8/2025)。
日本の会社・日本の方が出資する Sdn Bhd は、多くの場合 24% で計算することになります。
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2024.04.01日本
外国子会社合算税制の
基準が 30% から 27% へ 特定外国関係会社について、会社単位の合算課税の適用免除の要件である租税負担割合のしきい値が 27%(改正前 30%)に引き下げられました(租税特別措置法66条の6第7項第1号。改正当時の番号は第5項第1号で、2026年4月1日施行の改正で第7項第1号になりました)。内国法人の令和6年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
日本側の基準も動きます。ラブアン法人の税率はこのしきい値を下回るため、判定は避けて通れません。
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2024.08.01マレーシア
電子インボイス
(e-Invoice)の 段階導入が開始 年商の大きい事業者から順に対象となり、段階的に範囲が広がっています。免除の基準額もその後に改定されています。
現地法人の請求・記帳の実務が変わります。現地で会計を回せる体制があるかどうかが、実務上の分かれ目になります。
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2025.01.01マレーシア
私的会社の監査の
免除の 基準が改まる 売上・総資産・従業員数の 3 つのうち 2 つ以上を満たす私的会社は、監査が免除されます。基準は段階的に上がり、2025 年に始まる事業年度は売上・総資産 RM 100 万以下・従業員 10 人以下、2027 年に始まる事業年度からは RM 300 万・30 人です (SSM Practice Directive 10/2024)。
小さな Sdn Bhd では、毎年の監査の費用が変わります。対象になるかは会社ごとに確かめます。
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2025.09マレーシア
ラブアンの常勤の
人に «fit and proper» の要件 3% のために数える常勤の人は、職務に合った能力を持ち、ラブアンの法人に直接雇用され、ラブアンで実際に働くことが要件になりました (P.U.(A) 325/2025。官報 2025 年 9 月)。規則には施行日の条項がありません。
名義だけの雇用や、派遣・外注の人は常勤に数えられません。
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2025.10マレーシア
外国籍の従業員も EPF (従業員積立基金) の対象に
2025 年 10 月の給与から、有効な旅券と就労のパスを持つ外国籍の従業員 (家事使用人を除く) も EPF の対象になりました。会社と本人がそれぞれ月の給与の 2% を積み立て、翌月 15 日までに納めます (KWSP の発表 (2025-10-01))。
マレーシアの会社で外国籍の方に給与を払う場合は、EPF の登録と毎月の納付が要ります。
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2026.06.01マレーシア
就労ビザ(Employment Pass)の
最低給与が改定 新規・更新ともに、改定後の基準で審査されます。カテゴリごとの金額と最新の運用は「Employment Pass 取得ガイド」で解説しています。
役員・駐在員のビザ計画は、申請時点の基準で見直しが必要です。
この年表から言えること
税率だけで決めない
税率は制度の一部でしかなく、適用の条件のほうが先に変わります。条件を満たし続けられる体制があるかで判断します。
変更は遡ることがある
2021年の規則は2019年まで遡りました。「今の基準で大丈夫」は、将来の判定を保証しません。
追随する担当を決めておく
日本側とマレーシア側の双方で制度が動きます。どちらを誰が見るのかを最初に決めておくと、対応が遅れません。
出典
- Labuan FSA — Legislation(P.U.(A) 423/2021 ほか)公布 2021年11月22日。規則1(2)(3)・規則3・規則5・第一附則を原文で確認
- 国税庁 令和5年度 法人税関係法令の改正の概要(PDF)外国子会社合算税制の27%への引下げと適用開始時期
- e-Gov法令検索 租税特別措置法66条の6第7項第1号。項の番号は 2026年4月1日施行の改正(令和8年法律第12号)のあとの番号で、2026-10-08 に確認
- 国税庁 No.1478 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例
- 国税庁 CRSコーナー
- LHDN — e-Invoice Implementation Timeline段階導入の開始時期と対象範囲