MM2H の書類について、ネット上には「収入証明」「銀行残高証明」「アポスティーユ」といった言葉があふれています。このうち、現行の公式チェックリストに載っているものはありません。
この記事は、マレーシア観光芸術文化省(MOTAC)が公開している公式資料だけを根拠に、新規申請の書類と、日本でそろえるときに実際につまずく点を整理したものです。
結論:公式に求められる書類は6点
MOTAC の「Application Checklist」(2025年1月27日版)で、新規申請に求められる書類は次の6点です。
| # | 公式の書類名 | 日本で用意するもの | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 入国管理局の申請書(IM.12) | — | 認可エージェントが用意 |
| 2 | 本人のパスポート写し(顔写真ページ) | パスポート | — |
| 3 | 家族のパスポート写し(顔写真ページ) | 家族のパスポート | 同伴する家族全員分 |
| 4 | 家族関係の証明 | 戸籍謄本(全部事項証明書) | 英訳し、マレーシア大使館等で認証 |
| 5 | 無犯罪証明書(Letter of Good Conduct / Police Certificate) | 犯罪経歴証明書(渡航証明) | 18歳以上の本人・家族全員。有効期間が6か月以上残っていること。発行元は国籍国か居住国に限る |
| 6 | その他、求められた書類 | — | エージェントの指示に従う |
収入証明は含まれていません。MOTAC の規約(Terms and Regulations)に「海外収入の要件は全カテゴリで撤廃」と明記されています。銀行残高証明も公式リストにはありません。
公式チェックリストの注意書き
チェックリストには、書類そのものより重要な注意書きが5つ付いています。
- 不完全な申請は受け付けない
- すべての申請はマレーシア王立警察の審査を受ける
- 原本をアップロードし、写しは審査用に保管しておく
- 虚偽の申告は入国管理法 56条(1)(f) の違反で、RM 10,000 以下の罰金または5年以下の禁錮、またはその両方
- すべての書類を英訳し、マレーシア大使館・高等弁務官事務所・領事館、またはマレーシア外務省で認証を受ける
5番目が、日本で書類をそろえるときの最大の関門です。
最大の落とし穴:マレーシアは「アポスティーユ」が使えない
海外に日本の書類を出すとき、よく「アポスティーユを取ればよい」と説明されます。マレーシアには当てはまりません。
外務省が公開しているアポスティーユ条約(ハーグ条約)の締約国一覧(2026年9月11日更新)に、マレーシアは含まれていません。シンガポール・フィリピン・インドネシアは締約国ですが、マレーシアは違います。
そのため、日本の公文書をマレーシアで使うには、次の2段階が必要です。
① 外務省の「公印確認」
↓
② 駐日マレーシア大使館の「領事認証」
外務省の FAQ でも、公印確認は大使館・総領事館の領事認証を受けるための前段の認証とされ、公印確認のあとは必ず領事認証を取るよう書かれています。①だけでは足りず、必ず②まで進めてください。
外務省の公印確認(外務省 FAQ、2026年9月18日時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手数料 | 無料(郵送料は自己負担) |
| 期間 | 書類に不備がなければ、受領から3開庁日後に郵便で返送 |
| 申請方法 | 郵送、または外務本省(東京)・大阪分室の窓口。窓口で申請しても受け取りは郵送のみ |
| 書類の鮮度 | 発行日から3か月以上たった書類は原則受け付けない |
3か月ルールが効いてきます。戸籍謄本を早く取りすぎると、公印確認の段階で受け付けてもらえません。
翻訳文や私文書の場合
翻訳文や会社の書類などの私文書は、外務省が直接認証できません。公証役場で公証人の認証 → 法務局の公証人押印証明 → 外務省の順になります。北海道(札幌法務局管区内)・宮城・東京・神奈川・静岡・愛知・大阪・福岡の公証役場では、外務省の公印確認までを一度に済ませる「ワンストップサービス」が使えます(有料)。この場合も、駐日マレーシア大使館の領事認証は別に必要です。
外務省は翻訳をしません。自分で訳したものでよいか、翻訳にも公証人や外務省の認証が要るか、翻訳者の指定があるかは提出先によって違うと外務省も案内しています。エージェント経由で MOTAC の求めを確認してください。
無犯罪証明書(犯罪経歴証明書)の取り方
日本の無犯罪証明書は「犯罪経歴証明書」(渡航証明)と呼ばれ、警視庁・道府県警察本部が発行します(外務省「在外公館における証明」、2026年7月9日時点)。
| 住んでいる場所 | 申請先 | 所要期間 |
|---|---|---|
| 日本国内 | 住民登録のある市区町村を管轄する警察本部(警察署では申請できない) | 警察本部に確認 |
| 海外(一時帰国中) | 最終住所登録地を管轄する警察本部 | 警察本部に確認 |
| 海外 | 在外公館(日本大使館・総領事館)。外務省が警察庁に取り次ぐ | 概ね2か月、3か月以上かかることも |
押さえておくべき点が3つあります。
- 申請時に指紋を採取します。本人が出向く必要があります
- 証明書は日本語・英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語の5か国語で記載されます
- 封筒は開けないでください。外務省の FAQ で「開封されたもの(無効なもの)は原則として受け付けられません」とされています
MOTAC は「有効期間が6か月以上残っていること」を求めています。日本の犯罪経歴証明書の有効期間をどう数えるか(発行日から何か月までを有効とみなすか)は、申請前にエージェントに確認してください。また、発行元は国籍国か居住国に限られるため、マレーシア以外の第三国に住んでいる場合は、その国の証明書が求められることもあります。
書類以外の要件(定期預金・住宅・健康診断・参加費)
MOTAC の規約では、次の4つが資金・住宅・健康診断・参加費の要件として定められています。住宅購入と健康診断は「MM2H 参加の承認を受けたあと」と明記されています。
- 定期預金 — Silver USD 150,000/Gold USD 500,000/Platinum USD 1,000,000。マレーシアの認可金融機関に置く
- 住宅の購入(承認後)— Silver RM 600,000 以上/Gold RM 1,000,000 以上/Platinum RM 2,000,000 以上。10年間は売却不可(より高額な物件への買い替えは可)
- 健康診断(承認後)— 観光省指定のパネルクリニック・病院で、本人と家族全員
- 参加費(主申請者のみ・1回)— Silver RM 1,000/Gold RM 3,000/Platinum RM 200,000/SEZ・SFZ RM 1,000。家族は不要
健康診断は申請前ではなく承認後です。日本で先に受けておく必要はありません。
承認後の各種手続きと書類
MOTAC の申請ガイドブック(2026年5月)には、MM2H 参加後の手続きごとの書類と、処理期間の目安(Client Charter)が示されています。
| 手続き | 処理期間の目安 | 主な書類 |
|---|---|---|
| 更新(5年ごと) | 30営業日 | 新旧パスポート、IMM.12・IMM.55、指定医療機関の健康診断書、健康保険(60歳未満)、家族関係の証明(英訳・認証済み)、定期預金の最新の取引明細、銀行の担保(lien)設定の確認書(原本)、21歳を超える家族の法定宣誓書 |
| 家族の追加 | 30営業日 | 新旧パスポート、IMM.12・IMM.55、家族関係の証明(英訳・認証済み)、健康診断書、健康保険(60歳以上は免除)、21歳を超える家族の法定宣誓書 |
| 定期預金の引き出し(元本の最大50%) | 3営業日 | 医療費・住宅購入の支払い領収書、住宅なら売買契約書(S&P)か公共料金の請求書、定期預金の証書・最新の取引明細、担保設定の確認書(原本) |
| 家族の就学許可 | 14営業日 | 学校の入学許可書、入学金の支払い証明 |
| パスの移し替え(パスポート更新時) | 1営業日 | 新旧パスポート、IMM.12・IMM.55、家族ごとの Personal Bond |
| MM2H の終了 | 書類がそろってから3営業日 | 主申請者の終了申請書、パスポートと MM2H パスの写し、定期預金の証書か銀行の書面 |
定期預金は、承認後に住宅購入・教育・医療・マレーシア国内の観光の目的で元本の50%まで引き出せます(MOTAC 規約)。処理が3営業日と短いので、住宅購入の資金計画に組み込めます。
なお、これらの承認後の手続きは、プトラジャヤの MOTAC MM2H センターの窓口で書類を提出します(受付は平日 8:00〜10:00)。
日本側の書類はいつから動くか
公式に決まった順番はありませんが、外務省と MOTAC のルールから逆算すると、日本国内に住んでいる場合の段取りは次のとおりです。
- 犯罪経歴証明書を申請する(発給日数は警察本部に確認)
- 証明書が届いたら、戸籍謄本を取る(3か月ルールがあるため、最後に取る)
- 英訳を用意し、必要に応じて公証役場で認証
- 外務省で公印確認(受領から3開庁日後に返送)
- 駐日マレーシア大使館で領事認証(日数と費用は大使館に確認)
戸籍謄本を最初に取らないことがコツです。犯罪経歴証明書を待っている間に、戸籍謄本の発行から3か月が過ぎてしまうことがあります。
3か月ルールは犯罪経歴証明書にも当てはまります。証明書が届いたら、開封せずに早めに公印確認へ回してください。
よくある質問
Q. MM2H の申請に収入証明は必要ですか?
A. 必要ありません。MOTAC の規約に「海外収入の要件は全カテゴリで撤廃」と明記されており、公式の申請チェックリストにも含まれていません。以前の制度では月収の証明が必要だったため、古い情報が残っている点に注意してください。
Q. アポスティーユを取れば大丈夫ですか?
A. マレーシアでは使えません。外務省のアポスティーユ条約締約国一覧(2026年9月11日更新)にマレーシアは含まれていないため、「外務省の公印確認 → 駐日マレーシア大使館の領事認証」の2段階が必要です。
Q. 無犯罪証明書はどこで取りますか?
A. 日本国内に住んでいる場合は、住民登録のある市区町村を管轄する警察本部(警視庁・道府県警察本部)です。警察署では申請できません。申請時に指紋を採取するため、本人が出向く必要があります。海外在住者は在外公館で申請でき、概ね2か月、長いと3か月以上かかります。
Q. 家族の分の無犯罪証明書も必要ですか?
A. 18歳以上の家族は全員必要です。MOTAC のチェックリストで「本人と18歳以上の家族」が対象とされています。
Q. 健康診断は日本で受けていけばよいですか?
A. 不要です。MOTAC の規約では、健康診断は MM2H 参加の承認を受けたあとに、観光省が指定するマレーシアのパネルクリニック・病院で、本人と家族が受けます。
Q. 戸籍謄本はいつ取ればよいですか?
A. 手続きの最後に近いタイミングがよいです。外務省は発行日から3か月以上たった書類の公印確認を原則として受け付けていません。犯罪経歴証明書の発給を待っている間に期限が切れないよう、順番に注意してください。
Q. 自分で直接申請できますか?
A. 新規申請はできません。MOTAC の規約で、申請は観光省の認可(観光業法 1992 に基づくライセンス)を受けた MM2H エージェントを通じて行うと定められています。
Q. 書類に誤りがあった場合はどうなりますか?
A. 不完全な申請は受理されません。また、虚偽の申告は入国管理法 56条(1)(f) の違反で、RM 10,000 以下の罰金または5年以下の禁錮、またはその両方の対象になります。
まとめ
- 公式に求められる新規申請書類は 6点。収入証明は不要
- マレーシアはアポスティーユ条約の非締約国。「外務省の公印確認 → 駐日マレーシア大使館の領事認証」が必要
- 無犯罪証明書は警察本部で。封筒は開けない
- 戸籍謄本は3か月ルールがあるので最後に取る
- 健康診断と住宅購入は承認後
要件の全体像は MM2H の要件 2026 にまとめています。
出典(いずれも確認日 2026年9月27日)
- MOTAC「Application Checklist Malaysia My Second Home (MM2H) Programme」(2025年1月27日版)
- MOTAC「Terms and Regulations for New Participants under the MM2H Programme」(Accurate as of 22 July 2024)
- MOTAC「Malaysia My Second Home (MM2H) Programme Application Guidelines Booklet」(2026年5月掲載)
- 外務省「よくあるご質問(公印確認・アポスティーユ)」(2026年9月18日)
- 外務省「『外国公文書の認証を不要とする条約(ハーグ条約)』の締約国(地域)」(2026年9月11日)
- 外務省「在外公館における証明」(2026年7月9日)
制度は改定されることがあります。申請の前に、認可エージェントを通じて最新の要件を確認してください。
MM2H のご相談を受け付けています。
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