海外子会社の所得を、日本の株主の所得に合算して課税する制度です。法人税率の低い国に会社をつくる場合、日本側で最も影響が大きい制度になります。判定の考え方は日本側で必要な手続きのページで整理しています。ここでは、申告のときに何をいつ出すのかをまとめました。
このページは制度の概要をご案内するものです。実際に適用されるかどうかは個別の事情により異なります。具体的な判断は税理士・所轄税務署にご確認ください。当社は税務代理・税務相談を行う事業者ではありません。記載は 2026-09-20 時点で確認した内容です。
合算されなくても、書類は出します
ここが最も見落とされる点です。書類の添付義務は「合算する金額が出るかどうか」とは別に決まります。租税負担割合が下の水準を下回る外国関係会社があれば、合算額がゼロでも確定申告書への添付が必要です(租税特別措置法66条の6第14項、個人は同法40条の4第14項)。
| 特定外国関係会社 | 租税負担割合が 27%未満のとき添付 |
|---|---|
| 対象外国関係会社 | 租税負担割合が 20%未満のとき添付 |
| 部分対象外国関係会社 | 租税負担割合が 20%未満のとき添付 |
条文は「区分」と「租税負担割合」だけを要件にしていて、益金に算入する金額が生じることを条件にしていません。租税負担割合は事業年度ごとに動きます。前期は 20% 以上で添付不要だった会社が、当期 19% になれば添付義務が生じます。
添付する書類
財務省令で5種類が定められています(措置法施行規則22条の11第48項、個人は同規則18条の20第36項。中身は法人と個人で同じです)。
- 各事業年度の貸借対照表および損益計算書
- 本店所在地国の法人所得税の申告書の写し
- 企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合の法人所得税額の計算明細とその基礎資料
- 事業年度末の株主等の氏名・住所と保有株式数を記載した書類
- 出資関連外国法人等の株主等に係る上記の書類
令和7年度改正で、添付する書類の範囲が狭くなりました。株主資本等変動計算書、損益金の処分に関する計算書、貸借対照表・損益計算書の勘定科目内訳明細書は対象から外れています。古い解説には残っていることがあります。
部分対象外国関係会社のうち、部分適用対象金額が 2,000万円以下、または所得に占める割合が 5% 以下のものは添付が不要になります。ただし添付の代わりに保存の義務がかかります(同法66条の6第15項)。保存期間は法人が 7年(欠損の事業年度分は 10年)、個人は 7年です。添付不要は、何もしなくてよいという意味ではありません。
どの年分に合算するか
合算する時期は、日本側の決算期ではなく外国関係会社の事業年度の終わりを起点に決まります。
| 法人 | 外国関係会社の各事業年度終了の日の翌日から4か月を経過する日を含む事業年度(措置法66条の6第1項) |
|---|---|
| 個人 | 同じく翌日から4か月を経過する日の属する年分。雑所得の収入金額とみなされます(同法40条の4第1項) |
この「4か月」は、令和7年度改正で「2か月」から変わったものです。切り替わる時期が法人と個人で1年ずれており、同じ外国関係会社について、法人株主と個人株主で合算する年度が別になることがあります。経過措置には選べる規定も含まれるため、改正をまたぐ事業年度は税理士に確認してください。
使う様式
法人は別表十七(三)の系列を使います。「別表十七(三)」は計算書ではなく、対象となる会社の名称等を書く表紙です。金額の計算は十七(三の2)以降で行います。
| 別表十七(三) | 添付対象外国関係会社の名称等に関する明細書 |
|---|---|
| 同 付表1・付表2 | 株式等の保有割合/会社の区分と租税負担割合の計算 |
| 別表十七(三の2) | 特定外国関係会社・対象外国関係会社の適用対象金額等の計算 |
| 別表十七(三の5) | 控除対象外国法人税額の計算 |
| 別表十七(三の7) | 配当等の益金不算入額等の計算 |
個人には別表番号がなく、独立した明細書が6種類用意されています(名称等/保有割合/区分と租税負担割合/適用対象金額/部分適用対象金額/外国金融子会社等)。様式の番号と名称は、令和6年分から令和8年分まで変わっていません。変わったのは記載要領が引用する条項の番号です。
二重課税の調整
合算された所得には、現地でも法人所得税がかかっています。またその会社から配当を受け取れば、配当としても課税されます。この重なりを調整する規定があります。ただし法人と個人で扱いが大きく違います。
| 外国税額控除 | 法人は課税対象金額に対応する外国法人税を控除できます(措置法66条の7第1項)。個人にはこれに相当する規定が置かれていません |
|---|---|
| 配当を受けたとき | 法人は前 10年以内の合算額まで益金不算入(同法66条の8)。個人は前 3年以内の合算額まで配当所得から控除(同法40条の5) |
どちらも申告要件がついています。合算した年から配当を受ける年まで確定申告書を続けて出していることと、明細書を添付していることが条件です。合算した年に明細書を作っていなかったために、数年後の配当で調整が受けられない、という形で表れます。合算額が出た年の書類は、配当を受け取るときまで効いてきます。
出典
- e-Gov法令検索 租税特別措置法66条の6(法人)・40条の4(個人)・66条の7・66条の8・40条の5。項番号は 2026-09-20 時点の現行リビジョンで確認
- 国税庁 令和7年度 法人税関係法令の改正の概要合算時期の2か月から4か月への変更、添付書類の範囲の見直し
- 国税庁 令和5年度 法人税関係法令の改正の概要特定外国関係会社の適用免除基準の30%から27%への引下げ
- 国税庁 法人税等各種別表関係別表十七(三)系の番号と正式名称